Polaris

……あぁ、本当ムカつく。

イツキの一言一言に、いちいち惑わされる自分が一番ムカつく。だけど、この余裕そうなイツキもムカつく。


「本当ムカつく」

『うん』

「バカイツキ。嫌い」

『うん、分かってる』


余裕で、優しくて、温かい、そんな声のトーンを放つイツキ。それはまるで、私の言葉の素直じゃない部分を見透かしているようにも思えた。

……本当は、嫌いじゃない。

まだ出会って一ヶ月しか経っていなくても、あんな出会い方でも、こんなにも私にとって特別な人なんだ。この〝イツキ〟という人間は。


『ははは』

「……なに笑ってんのよ」


突然、電話越しにくすくすと笑い始めたイツキ。そんな彼に、私が冷たく問いかけると、電話越しの笑い声が小さくなっていく。


『だって、嫌いとかムカつくって言いつつも電話切らないんだもん。キョンキョン』

そう言い終わると、またイツキの大きな笑い声だけが画面越しに聞こえてくる。

「な……!それは……あの」

痛いところをつかれてしまった私は、なんとか誤魔化そうと試みるけれど、良い言い訳が思いつかず結局口をモゴモゴしているだけ。

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