Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「隙を見せるからだよ、貴音くん」
「ちょ、だから痛えっつーの」
さっきの険しい表情なんてもう微塵も感じられない貴兄のいつもの優しい笑顔。
その笑顔に自然と笑みが零れる。
「えへへ」
「……何だよ」
「んー何でもない。……貴兄、ありがと。ごめんね」
「謝るんなら心配かけさせんじゃねぇよ」
後頭部に手を回され、グイッと引き寄せられた後頭部。
コツンと額同士がぶつかり合った後、貴兄の透き通った栗色の瞳と目が合った。
「お前と優音を傷付けた事、アイツ等に後悔させてやる」
「貴兄……」
「だから大人しく待っとけよ」
「……うん。大人しくしとく」
コクン、と素直に頷けば、貴兄はゆるりと頬を緩ませた。
「オイ、そこのバカップル、そろそろいいか?っていうかその激甘っぷりはワザとか?ワザとだろ?絶対ワザとだよな?」
「……あ」
皆の存在忘れてた。
煌の呆れた声に慌てて振り向けば、声色と同様呆れた表情で此方を見ているみんながいて。
何とも言えないその冷ややかな視線にエヘッと苦笑する。
「優音との約束を破ったんだ。これぐらいいいだろ」
気まずい空気の中、さらりと意味不明な事を言い放ったのは貴兄で。
「悪かった」
それがどういう意味なのかを理解する前に十夜の返事が聞こえた。
一体どういう───あ。
一瞬だけ停止した思考。
けれど、それも直ぐに覚醒した。
視線を交える二人を見て、貴兄の言った言葉の意味が理解出来たから。
「……っ、」
理解した途端、急激に込み上げてきた羞恥心。
「お前──」
「た、貴兄!それはまた後日でいいから!」
これ以上喋らすまいと慌てて両手で貴兄の口を封じる。