Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
「凛音、時間はまだあれから一時間も経っていない。……桐谷達がどうなったかは、今、下の奴等に探って貰ってる」
「………」
十夜達がどうなったかは分からない。
その言葉に目の前が真っ暗になった。
十夜は電話で『すぐ行く』と言ってくれた。
それなのにあたしは逃げた。
合わせる顔がないからという理由で逃げたんだ。
「どんな顔して、会えばいいの?」
十夜を傷付けたのは“あたし”なのに。
「……もしかして、思い出したのか?」
言いにくそうに紡がれたその言葉に、心臓が鈍い音を立てる。
「中田は、全部知ってたんだね……」
あたしが十夜に怪我を負わせた事、全部知ってた。
「……あぁ」
「なんで?知ってたのならなんで……」
──教えてくれなかったの?
最後の言葉は声にはならなかった。
だって、聞かなくても中田の顔を見たら分かるから。
中田はあたしの為を思って言わなかったんだと思う。
あたしが傷付くと思ったから。
ねぇ、そうなんでしょう?中田。
「──俺が知ったのは、“あの時”だった」
そっと目を閉じて、静かに紡ぎ始める中田。
あたしは全てを受け入れる為、中田の言葉に耳を傾けた。
「……あの時?」
「そう。あの時。
凛音が黒烏を潰した、あの時。鳳皇の下っ端がヤラれてお前がキレた時」
「それって……」
あたしが十夜に鳳皇を抜けると言った、あの日?