俺様黒王子とニセ恋!?契約
それを気配で感じたのか、篤樹も頬杖をついたまま、チラッと目だけを彼女たちに向ける。
すると、彼女たちの視線が、面白いくらいサーッと引いて行った。


そして、さっきまでの勢いはどうしたのか、とても大人しくコソコソと隠れるような声で話し始めた。
しかもどうやら話題も真っ当な物に変化しているらしい。


「……イケメンには聞かせられない……か」


態度があまりにあけっぴろげで、金子さんに失礼じゃないかと思いながら、私は辿り着いた答えをボソッと呟いた。
は?と篤樹から聞き返される。
私は慌てて首を振って自分の呟きを打ち消した。


篤樹はキョトンとした目で一度首を傾げてから、そうだ、と思い出したように切り出す。


「澪。明日の夜、空けとけ」

「は?」


『暇か?』じゃなくて『空けとけ』と来たか。
命令調で言われて、ムッとしていいはずなのに、ドキドキして顔が綻びそうになってしまう自分をどうすればいいのか。


「……何か用?」


だけど私の口を突くのは、警戒心いっぱいの下から探りを入れる言葉だ。
それでも、篤樹は特段気にした様子もない。


「接待の予定が急遽延期になって、ぽっかり予定が空いた。だから」


篤樹はそこで言葉を切って、意味深に瞳を妖しく光らせると、グッと身を乗り出して私を上目遣いに見つめた。


「ヤらせろ」
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