雪降る夜に教えてよ。
「……なんて言えばいいのかな、秋元さんは、女性として認識して来ない人となら上手く付き合えているみたいだ。どちらかと言うと友達感覚の人?」

桐生さんは赤信号で車を停めると、ちらっと私を見て片眉を上げ、そして苦笑する。

「不思議だよね。普通それだけ美人なら、それを武器にする女性は昔から少なくはない。クレオパトラや西大后なんて有名だ」

何を言い出すの、この人は……そんな歴史的な有名人を出されても戸惑います。

信号が青に替わりギアをチェンジして車を走らせながら、桐生さんは胸元から煙草を取り出した。

「いいかな?」

「ど、どうぞ」

桐生さんって煙草を吸うんだ。

ぼんやりしていたら彼はライターで煙草に火を付け、軽い動作で細く窓を開けた。

冷たいけれど涼しい風が気持ちいい。

雪明かりに照らされた煙が微かに流れていく。流れて霧散して、闇に消えていく。

眺めていたら、桐生さんはフッと笑った。

「最初に興味を持ったのは、たぶん四ヵ月前の話かな」

唐突に始まった話に、目を丸くして彼を見る。

四ヵ月前と言えば、ちょうど桐生さんがオフィスに来た当時だ。

「俺の新任の挨拶の途中でいきなりオフィスに入って来て、君は俺に片手を上げて“初めまして”と言ったきり席に着いたんだ。みんな立ち上がっている中で座って仕事を始めてるし、正直驚いたよ」

確かその日は、法人顧客のデータにウィルスが発生して、対応途中だった記憶がある。

SEの人にお願いして対応策を考えてもらったりしていて、かなり急いでいた。

「うん。かなり新鮮だったね。日本人でああいう対応をする人を見たことがない」

えー……と。

「すみません?」

「や。会社の人間としてはいい対応だよ。後から聞いたけど、大変だったんだろう?」

「どうにかなりましたし……」

「そうそう。君は目の色変える女性陣の中でも、特に淡々としてたんだ」

目の色変える……。

「俺がクラウン・ウェルズ社の会長の孫って知ったら、目の色変える人は多いよ」

クラウン・ウェルズ社なら聞いたことがある。
確か本社はニューヨークで、世界規模の大企業だったはず。
そして会長はイギリスの人だったはず。

「ハーフなんですか?」

桐生さんは吹き出して咳込んだ。

「君が聞きたいことはそこなの?」

他に何を聞けと?

「普通は、御長男ですかとか、何故関連会社にいないんですかとか聞いてくる」
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