雪降る夜に教えてよ。

櫻空と雷鳴

*****



「春ですねー」

「春だねェ」

そんな事を呟きながら、綺麗な満開の桜の下。

佳奈とのほほんとお茶を飲みながら、のほほんと羊羹を食べていたりする。

「マネージャー助けなくていいのか? 秋元さん」

夏樹くんの言葉に、ちらっと人が多く集まっている方向を見た。

新入社員歓迎会を兼ねたお花見会。
コールセンターとヘルプデスクが合同で、休みの昼日中、近くの公園を陣取っていたりする。

ちなみに家族の参加も可能。

故に、何故か全くと言って関係のないSEの夏樹くんも飛び入り参加していても、誰もが見て見ぬふりしてくれていた。

「ムリムリ。あそこに加藤くんもいるから、めんどくさい」

加藤くんは新入社員ガイダンスでイキナリ私をお食事に誘ってきた、あの男の子。

私が抜けたシステムヘルプデスクに配属され、あの素直ともいえる幼さがウケたのか、お局様軍団に可愛がられている。

その後も何故か、何度も昼食に誘ってくるのね。

「ただでも桐生さんと一緒のシステム管理なのに、これ以上、敵増をやしたくないし」

「薄情だな~」

「自由参加なのに、来るって言ったのは桐生さんなんだし。こうなるのは目に見えてたし」

「そりゃ、秋元女史が来るって言ったら、あの人は来ちゃうだろ~」

そういうモノなのかな。

桐生さんの方を見て小首を傾げる。

この頃だと、企みスマイルと営業スマイルの見分けがついてきた。今は間違いなく完璧な営業スマイルだ。

「でも、助けるって言ってもどうやるのぅ?」

佳奈の言葉にますます首を傾げる。

「ああなっちゃうと、なかなか手出しできないよねぇ」

「なんの相談事?」

急に聞こえて来た声に、三人とも何故かギクリとして振り返る。

「早良さん……」

ビールを片手に嫣然と微笑む、ヘルプデスク影の女傑が登場した。

「なぁに? 桐生王子様救出の相談?」

早良さんは、佳奈の肩にしなだれかかるように寄りかかり、ニヤリと私を見た。

うーん。桐生さんは王子様って柄じゃないですけど。

「あの土橋に捕まってるようじゃ、難しいかもね」
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