雪降る夜に教えてよ。
早良さんは手をかざして、人ゴミの山をケタケタ笑いながら眺めている。

「秋もっちゃんが、急な仕事が入ったとか、なんとか言って連れてくればいいじゃないの」

「そんなことしたら、私が後でお局様軍団に吊し上げになります」

「それもそうか」

そう言いながら、早良さんはビールを飲み、ちらっと私を見た。

……その意味深な視線はなんですか。

「あんた、桐生マネとつきあってるの?」

佳奈と夏樹くんが同時にお茶を吹き出し、私は私で首を傾げた。

「んー……どうなんでしょう?」

キスし合うのが“付き合う”の定義であれば、私たちのこの関係はそうなんだろうけれど、たぶん何かが違う。

どこか冷静な私を早良さんは微笑ましく、残り二人は呆然と見ていた。

「え。てか、さなちゃんが冷静に答えてる!」

「ぅわっマジで!?」

とか言ってる夏樹君を軽く睨んでから、早良さんを見た。

「何故、そう思われます?」

「そりゃね。そこの二人より、私の方が近くで見てるからでしょうよ」

早良さんは腕を組み、うーんと唸って目をつぶった。

「だって、あの御仁、たいして感情見せないじゃない? それはあんたも似たり寄ったりなんだけどさ」

うーん、さすがは姐御ですねぇ。エライ冷静。

「私みたいに、ちゃんと愛しちゃってる旦那がいる女だと、男を見る目ってのも、あっちの子たちとは違うから……けっこう冷静に眺められるのよね」

あー……っと。これはノロケですかね? ラブラブですか。

「でね。最近まで、可愛いなぁ、食べちゃいたいなぁ、みたいな視線だった男が余裕かましてたらさ。あ、おやりになったのかな? とか思う訳じゃない?」

……あの。

「そ、そそ、そんなことは…っ」

「うん。OK。今のはとっても解りやすかった」

なにが!? 私ただ単に慌てただけだよね?

「まだまだなんだ。ま、あんたは無防備なとこあるから心配してたけど、中々見る目がある男で良かった」

そう言うと、早良さんは空になった空き缶を片手で潰す。

「あんたはどうせ面倒臭がってるしょうし、しょーがないから、お姉様が一肌脱いであげる」

言うなり、早良さんはお局様軍団の中に紛れ込んで行った。

えーと。
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