ハメごろし
「失礼しました。それでは、次のものを」
頭を下げてその場を後にする。
これで最後だ。アイツの肉をワインで煮込んだシチュー。
肉は柔らかくほどけるようになるまで煮込んである。
「美味しいわ」
奥さんも娘も手を止めることなく口へ運び続けている。
「この肉柔らかい。甘くて美味しい! ほんとパパ何してんだろ。来たらこの肉がなんだか問い詰めよう。どこで売ってるんだろう」
おかわりまでして平らげていく。
その姿があまりにも滑稽で、哀れになってくる。
旨い旨いと言って食っているその肉は、おまえの父親だ。
もっと食え。
全部食ってくれたらそのあとが楽だから。
証拠となる体はどこにもない。
食えない骨や髪は簡単に消せる。
これで、あたしが殺した事実はなくなる。