ハメごろし

『奥さんと別れるって言ってたじゃない。あれはどうなったの?』


『君、僕の立場を考えたらそれは難しいとこの前も言ったろ?』


『あなたの言葉を信じてずっと来たのよ!』


『別れるのは無理だ』


『最っ低! お腹の子どもはどうするのよ!』


『子供なんて聞いてないぞ』


『……できたの。あなたの子よ』



 アイツは深くため息をついて、『おろしてくれ』そう言ったっけ。


 それから何週間か話し合ってきたけど平行線で、それでも無性にもお腹の子は育つのよ。




「……さん」




 それなのにアイツはあたしを邪険に扱って……




「ねさん」



 許せなかった。



「三峰さん」





 顔を上げた。奥さんと娘が心配そうに私を見てる。




「ねえ、大丈夫? もういいからさ、パパ来るまで一緒に食事しない? 顔、青いよ」



 娘に心配されるとは。

 顔が青いのは余計なことを思い出したから。

 一緒に食事? 冗談でしょ。

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