めぐり逢えたのに
私は、彼の熱い吐息を首に感じて、小さい声で「…はい」と囁いた。
秘かにこの声が彼に届かなければいいな、と願いながら。

しかし、彼は私の返事を聞き逃さなかった。急に私を突き放して、
「へー、最近のJKってすごいね。初めて会う知らない相手とやっちゃうんだ。」
と、軽蔑したように冷たい声をだした。

そして、私のもとを去ってすたすた早足で歩いてどこかへ行ってしまった。

私は、自分の解答が間違ってた事に気付いたが、もちろん答え直すチャンスなどない事はすぐに理解した。
男の人と付き合った事もない私には、彼を追いかけることなど思いつきもせず、彼がどんどん歩き去って行くのを呆然と見送るだけだった。



それからパパの元に戻った時に私は少し涙を流していたらしい。
驚いたパパが、何があったのかしつこく聞いてきたが、私はただ黙って下を向いているだけだった。ママに化粧を直してもらって、それから、何人もの男の人が私を慰めに話しかけて来てくれたが、一度沈んだ気持ちはなかなか浮き上がれなかった。

一人だけテーブルに着いて、ブスッとしていると、パパの付き合いのある銀行の誰かの親戚とかいう人の甥にあたる人か何か……、よくわからないけどとにかく、パパと何とかつながっているらしい人が、私にジュースを持って来てくれた。

「万里花ちゃんはまだ飲めないから、はい、これ。」

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