めぐり逢えたのに
「信用されてないなあ。」

佐々倉はたいしてガッカリした様子も見せずに言った。だから、わたしも、さも当たり前の事を言っているような顔をして頷いた。
 
「そりゃそうでしょ。偽装結婚して僕は恋人と暮らします、なんて男、どうやって信用できるのよ。」

「要するに、君は、一人でマンションに住んで、毎月の生活が経済的に保証されれば、僕が恋人と一緒にいることを認めてくれるんだね?」

「それから、私の生活にも干渉しないでね。あ、あと、私は贅沢になれているから結構お金がかかることも忘れないでね。」

「うん、そこは君が満足出来るようにするのは僕の義務だと思ってる。愛も金もない男とやっていくのは君も辛いだろうから。まあ、幸いうちの親父の錬金術はなかなかのもんだから、いざとなったら、泣きつこうと思ってるけど。」

「何、結婚する前から実家をアテにしてるってわけ?だらしないなあ。」

「当たり前だよ。親父たちの我が儘に付き合って、好きでもない人と結婚するわけだから、相応の代償は頂かないと。」

「好きでもない人?」

「お互い様だろ。」

彼の口ぶりに少し傷ついている自分がいた。仮にも結婚だ。一応一生添い遂げようと思って(思ってないけど)誓うものじゃないのか、結婚というのは。

「また、憮然とした顔をする。」

佐々倉は私が機嫌を損ねたことに気付いたようだった。

「一々こだわるなよ。それとも、君は僕のことが好きなのか?」



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