めぐり逢えたのに
室内の他の社員たちは、そんな二人に冷ややかな目を注いでいた。
佐々倉もまだ、戸川に来て日が浅く、社内の勢力図がはっきりと掴めないでいた。だから、誰かと腹を割って話ができるような状態ではなかった。

何とかこの事態を打開しようと、佐々倉は仕方なくご機嫌取りに美穂を飲みに誘った。

これがまた裏目にでるのである。

強引な美穂の誘いにずるずると何軒か付き合ってしまい、気がつけば終電の時間はとっくに過ぎていた。美穂は事あるごとにしおりのことをちらつかせるので、佐々倉としても断固とした態度が取りにくかった。

「アタシ、今晩は帰りたくないな〜」

マティーニを飲みながら、ホテルのバーで、佐々倉にもたれかかってくる。

「根も葉もない噂が流れて困ってるんでしょう、室長?」

唐沢美穂は佐々倉が思っていたよりもずっとタチが悪かった。佐々倉はそのホテルに部屋を取り、美穂を泊まらせると自分はマンションに戻った。それが夜中の2時過ぎである。

朝、美穂が目を覚ましてみると、綺麗なホテルに一人優雅に泊まっていた、という訳だった。
これが、彼女の自尊心をいたく傷つけたらしい……、というのに佐々倉が気付いたのは、不倫相手が唐沢美穂というのが佐々倉の耳にも入ってきた時だった。



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