めぐり逢えたのに
次の日の朝、私が目を覚ましたとき、めずらしく拓也はまだ私の隣りですうすうと寝息を立てていた。穏やかな顔をしていたから、私の心も自然とほぐれてきて、いつも拓也がそうしてくれているように、拓也の髪を手ですいていた。そのうちに、拓也が目を覚ましてう―—んと伸びをした。

「ゴメン、起こしちゃった?」
「久しぶりによく寝た………。」

ふあぁと無邪気にあくびをする拓也が愛おしい。
無防備にシーツと戯れる拓也は、まるで映画のワンシーンのように絵になる(さすがに一流の俳優だと私は感服した)。

「仕事、忙しかったの?」
「それもあるけど……、万里花さんのことが気になってたから。無事を確認できて、隣りで寝たから安心した。」

拓也はそう言ってニコッと笑う。
この微笑みは反則だと思う。こんな風に笑われて、恋に落ちない女がいるだろうか。

「どうしたの?」
「ずるいなあ……って思って。」
「ずるい?何が?」
「その笑顔。」

私はむっつりと応えた。拓也はいっそう爽やかな笑顔を浮かべて私の顔を覗き込む。

「それは、オレの最大のチャームポイントだからね。」
「わかってるんだ。わかってて、万人にその笑顔を振りまいてるんだ。」


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