めぐり逢えたのに
一人ベッドにもぐっていると、かなり長いこと経った後、だいぶ落ち着いたらしい拓也がやってきて隣りに横になった。

「佐々倉さん、あっちに戻ったよ。」
「……うん。」

拓也は天井を見ながらポツリと呟いた。

「万里花さん、オレと結婚しない?アイツとちゃんと別れてさ。」

私は驚いて拓也の顔を見た。

「……って、無理かな。君のお父さんが許してくれそうもないしね。ゴメン、今言った事は忘れて。」
「私も、拓也と一緒になれたらどんなにいいだろう……って。」

言いながら、父と母の顔が頭をよぎった。それから……、

佐々倉の悲しそうな顔がふっと浮かんだ。

私はぶるんぶるんと首を横に振った。
そんなはずはない。

拓也は私の心を見透かしたかのような目でじっと私を見つめる。拓也の視線が絡まりついて息苦しい。

「『戸川のマリカ様』は難攻不落の城だよ。」

拓也はいつものように私を抱きしめたけれど、私はいつものようにわくわくした楽しい気持ちになれなかった。拓也も同じ気持ちだったと思う。

ため息をつきながら抱き合うなんて初めてのことだった。



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