めぐり逢えたのに
「お父さん?」

私は頷いた。

「今晩一緒に食事しろ、だって。ちょっと行ってくる。」
「久しぶりに会えたのに……、オレ、明日からまた撮影なのになぁ。」
「ロケ?」
「違うけど。」
「じゃ、毎日帰ってくるんでしょ。」
「……今晩って、佐々倉も一緒?」

す、鋭い。

「……うん…。」
「ああー、オレも行きたいなー。」

露骨に不機嫌な声をあげた。

「無茶言わないでよ。」
「……ごめん。万里花さんを困らせるつもりじゃないんだ。」
「なら言わないで。私、困っちゃうよ?拓也は佐々倉さんのこと、気にし過ぎじゃない。」
「気にし過ぎ?何かあると万里花さんのところにやって来て、慰めたりする男のことは気になるだろ、しかも壁一枚隔てた隣りに住んでて、馴れ馴れしく『万里花』なんて呼ぶヤツだし。」
「だから、夕べはマンションにマスコミの人とか来てたし……」
「そもそも万里花さんが結婚してるから、こんなにこそこそしなくちゃいけないんだよ。オレは、世間に公表したって全然構わないよ。」

私は、拓也の開き直ったような言い方にカチンときてしまった。

「だったら……、だったら、どうして! どうしてあの時、突然消えたりしたのよ?」

今朝は拓也も私も一度口にしたら留まるところを知らなかった。



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