めぐり逢えたのに
「万里花さん……、オレはさ、『戸川のマリカ様』に惚れてたんだよなー。『戸川のマリカ様』は、強くて明るくて圧倒的な輝きがあって。何よりも、万里花さんは自分のその魅力を堂々と周りに振りまいて行くところがかっこよくてさ。

だから……、君から『戸川』を奪っちゃったら、万里花さんはオレのそばで輝いていられるのかな、ってね。万里花さんが苦しくなっちゃうんじゃないかな、ってね、ちょっと自信なかったんだよ、オレは。もしかすると今でもそうなのかもしれないけど。

だから、万里花さんが『戸川』を捨てられないことは……、それは……、わかってるんだ。佐々倉がセットでくっついてくることには全く納得できないけど。」

拓也はアハハと笑った。

「拓也……」

また涙が溢れてくる。

「万里花さん、オレと別れるんだから絶対幸せになってくれよ?」
「……うん。」
「オレ、不幸な万里花さんなんかキライだからね。」
「……うん。」
「万里花さん、最後にキスしていい?」
「………」

いいのか? 私は頭の中でちょっと考えた。

「いいの?」

私は拓也に聞き返した。

「いや、ダメでしょ。未練が残るしグデグデになっちゃうじゃない。ここは、きっぱり断るのが正しい判断だと思うよ?しかも、キスしちゃったら、オレ、万里花さんを抱きたくなっちゃうもん。」

「じゃ、何で聞くのよ。」

「したいから。それにー、佐々倉に対するせめてもの意趣返しでもあるかな。」

私は拓也の唇にちょこんと軽く口づけをした。





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