めぐり逢えたのに
「何、それ。」
「キス。これでいい?」
「いいわけないじゃん。最後だよ?」

すこし不機嫌になった拓也に私は笑い出してしまった。
ああー、やっぱり拓也が大好きだな〜って思った。

拓也は、ゆっくりと私の唇に自分のを重ねてきた。口の中に舌を入れてきてなめらかに動かす。
すべるような動きに、私の舌も反応した。もっと欲しい……。
キスだけで納まりそうにないのは私も同じだった。

「グデグデになっちゃうんじゃないの?」

私がからかうように言うと、拓也はすました顔で答えた。

「『戸川のマリカ様』は意外と残酷だからそれはないでしょ。決心がついたらすっぱりとオレを切るでしょ。」

拓也はやっぱり最高だ。

「決めた。明日別れる。ベッドに連れて行って。」


その夜、私たちは何度も何度も抱き合った。
お互いの存在を確かめるように、体中を触ったり、キスし合ったり、抱きしめたり、笑いながらくすぐっりっこをしたり、おしゃべりしたり……。

こんなに陽気で愉快なセックスはもう二度とないだろう。
私と拓也だけの特別の時間。
次の日、私が目を覚ますと拓也はもうどこにもいなかった。
枕元にメモが置いてあった。

  必ず幸せになって下さい

私は、このメモに返事が出せないことがとても悲しいと思った。



< 266 / 270 >

この作品をシェア

pagetop