めぐり逢えたのに
長い長い一週間が明けて、外出禁止とケータイ禁止の刑が明けると、私は緊張しながらも、早速彼に連絡を取った。
今度は彼は電話にすぐ出た。

「何」

一言、不機嫌な声を発しただけだった。私は少し、いや、大いにひるんだが、今日学校が終わったら遊びに行っていいか聞いた。
彼は、やっぱり無愛想な声で「好きにすれば」とだけ答えた。

本当にばかみたいだ、と思ったけれど、私は拒絶されなかったことだけで、嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。
学校が終わると超特急で彼の家に行った。
鍵があったので、部屋に入ることは出来たけど、待てど暮らせど彼がやって来る事はなかった。

あ、公演があるのか、って気がついたのは部屋を出る時だった。

バカだなあ、そんな簡単なことにも気付かないなんて。今度の週末に公演が明ける。私は、公演明けにパンフレットを持っていきなり現れて驚かしてやろう、って思った。
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