めぐり逢えたのに
学業も、専念する、とまでは言えなかったかもしれないけれど、私は精を出して勉強していた。
高校時代は、何しろなかなか会えない彼の都合が最優先で勉強どころではなかったし、試験前には父が誰かをつけてくれて私を勉強させたので、まあ何とかなっていた。

だから、大学に入って、私は初めて自分の意思で勉強をした。
少しだけ歴史に興味を持つようになった。


その合間合間に、友だちと遊んだり、旅行に行ったり、要するに、私は典型的な女子大生の生活にどっぷりつかっていた。
彼のことが忘れられたわけではなかったけれど、それなりに毎日を充実して過ごすようになっていた。


まるで私の気持ちのタイミングを見計らったように、その頃から父は私を連れ回す事が増えていった。
それはパーティーだったりゴルフだったり、スポーツ観戦だったり、歌舞伎や相撲を観に行かされた事もあった。父と一緒にいると、誰でも私に愛想が良かったし、ちやほやしてくれたから、それはそれで結構楽しかった。

とにかく大勢の御曹司に会う機会が俄然増えて来て、私はすぐに父の意図を理解した。

それでも、誰かと付き合うとかそんな気には全然なれなくて、私はのらりくらりと彼らのデートのお誘いを断っていた。
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