【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
「ん~♡良い香り♡」

私はオーブンの前で深呼吸をする。目の前には、香ばしくぷっくり膨れたスコーンが、綺麗に整列していた。

「もう少しで焼けるわね。焼き立てをみんなで食べましょうか」

「はい!楽しみー♡」

あ、想像しただけでよたれが……。

おもむろに雪ちゃんが立ち上がる。

「雪ちゃん?」

「その前に、一服してくるわ」

タバコを持って、外へと行ってしまった。ここは全面禁煙だからね。

雪ちゃんが出て行くのをぼーっと眺めていたら、「仲良くやってるみたいね」とハナちゃんに言われて振り返った。

「え?」

「雪ちゃんと」

「あぁ……」

私は椅子に腰掛け、足をブラブラさせる。

「どうしたの?浮かない顔して」

「いえ……なんでも……」

本当は、なんでもなくなんてない。
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