【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
「ふ~。お腹いっぱい」

秘書課に戻る道すがら、満腹になったお腹を擦る。お腹はいっぱいになったけど、満足は出来なかった。

「一人で食べるご飯ってあんなに美味しくないものなんだな……」

そんな事を言いながら廊下を歩いていると、一人の男性作業員がとある部屋から出て来た。

その作業員はキャップを目深(まぶか)にかぶり、うつむき加減でこちらに歩いて来る。顔は、見えない。すれ違い様に「お疲れ様です」と声を掛けると、その作業員は目も合わさずペコッと頭だけを下げ、行ってしまった。


(…………ん?)


少し歩いて、私は頭に残る残像で何か違和感を感じ、立ち止まった。

振り返って見てみる。ボサボサのロン毛にキャップをかぶり、繋ぎの作業服を着た男性。

(なんだろ……)

何が?と言われると明確な答えが出せそうにないんだけど、なんだか違和感。しかも、どこかで見た事のある人な気がする。

少し考えてみるけど、知り合いにヒットするこんな容姿の人はいなかった。

「ん~?気のせい、か……」

作業員だから、どこかですれ違っているのかもしれない。

そう結論付けて、私はまた歩き出した。

――しかしこの時。

この後に起こる大事件の起爆剤は、既に投じられていた。
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