【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有
すると咲希子が、コソッと耳打ちして来た。

「いや、確信は持てないけだんだけど……」

「何よ?勿体振らないで言ってよ」

咲希子は少し迷って、口を開く。

「……盗撮されてるかも」

「…………は?」

「盗撮」

「……えぇっ!?」

まさかの言葉に、私は叫びながら勢いよく立ち上がる。

「声が大きい」

シッ!と言われて掌で口元を覆う。

「だ、だって……」

「確証は持てないけど、笹木の仕業かもしれないわね。ずっと会社休んでるし、四六時中アンタを張り込むには持ってこい」

「そんな…まさか……」

私は愕然とする。確かに笹木はずっと会社を休んでいる。でも、それだけで決め付けるのは……。

「何言ってんのよ。他にもアイツには余罪があるじゃない。疑うには十分過ぎるわ」

「……確かに」

ストーカー紛いの事をされて、今度は本当のストーカーになってしまったんだろうか。

「とにかく、気を付けなさいよ」

「……………」

「聞いてる?」

「うん……」

正直、頭に入って来ない。

――『盗撮』――

と言う文字が、頭の中をグルグル回る。

いつから?あの光に気が付いたのは。雪ちゃんとのデートから帰って来た時。でも、もしかしたらその前から……。想像して体が震える。

いや、でもまだそうだと決まった訳じゃない。と言うか、そうじゃないと思いたい。

(うん。きっと私の勘違いよ……)

――しかし、その淡い希望は今日、見事に打ち砕かれる事になる。
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