チェリー達よ天駆けて。
「もしもしー」

俺が電話に出ると、待っていましたとばかりに興奮気味の声が聞こえてきた。


『あ、大気?ちょっと用事があるんだ』

「…零か。今もう夜中だぞ。乙女が美容のシンデレラタイムにどうしたんだ?」


小笠原零。
いつも気づけば隣にいた幼馴染みだ。

昔から見てきた俺が言うのもなんだけど、…おっぱい大きい。


『…ほんと、大ちゃんは[美容のシンデレラタイム]だなんてどこで覚えてくるのかな…?』


声の上ずり具合からして、今回の話の掴みは上々だったようだ。


「で、どうしたの」



『…』


いつもならここらへんで零が雑談を振ってくるのだが、今日は違う用件のようだった。



…まさか。


彼女の家庭に何かあったのか?

零は昔からの大切な幼馴染みだ。

彼女に乱暴しようとする男がもし存在していたとしたら…。

嫌な心配が広がっていく。


「おい、零、何かあったのか?困ってるなら俺にー」
『大気、私の付き人になって』


「…は?」


…とっさに出た言葉はそれだった。


俺が零の付き人に?
聞き間違いか?

頭の中の思考回路がぐるぐると高速回転し、しまいにあまりの高速さに頭がついていかず、頭がオーバーヒートしてしまうー

俺の頭はそんな感覚に陥っていた。

それは零にも伝わったのだろう。

零の心配そうな『大丈夫?』という声で我に帰ることができた。


「…零、それ本当か…?」

『……うん』



俺が付き人になったのが嫌なのではないか。
零の声はそんなことを考えさせられるほど、暗く、落ち込んでいた。


そりゃあ俺だって露骨な恋愛感情を抱いていたわけでもないけど、一応おっぱいは大きいし美形だし、なにしろ昔から一緒に登下校していた中だ。
そんなに一緒にいたというのに、嫌われていたとしたらショック以外の何者でもない。


「…零、ひどく声が暗くないか」

『………』

「…俺が嫌いなのか?なら早くー」
『違う。』

言い切った彼女の声は、はっきりとしていた。

零は続ける。



『ほら、普通のセラって大体付き人を…その、あの、性…的?なことに使ったりするじゃん。』

「うん」

『で、それは付き人の使い方の中の一つ…でしょ?だから、私はそんなことしないで大気と幸せに過ごそうって思ってたんだけど…。』

「だけど?」

『…両親が大気と子供を作って、早く家を継いでくれる男を産めって』

「…え」


今度こそ本当に言葉を失った。

え、何、子供?

俺が零と?


俺の頭は一瞬でオーバーヒートした。
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