彼女のことは俺が守る【完全版】
「こんな状態で本当に海斗さんと別れられるのかな?」


 誰にも聞こえないくらいの小さな呟きを私は零してからバスルームに入ったのだった。頭から熱めのシャワーを浴びると、あれだけ昼間に泣いたのに、また涙が流れてきた。その涙は昼に流した涙とは全く違うものだった。


 私は思っていたよりも海斗さんのことが好きだった。


 しばらくシャワーを浴びて、それから、冷たいタオルを目の上に乗せて時間を過ごす。すると少しだけ見れるようになった私がいた。目蓋の腫れは完全とまでは言えないまでも収まり、充血していた目もかなり改善された。これで海斗さんに少しは心配かけなくていいかと思うとホッとする。


 着替えもした私は簡単に髪を乾かしてからリビングに行くと海斗さんはさっきのままソファに座っていた。何か難しいことを考えているような表情を浮かべているものの、私の顔を見るとその表情を一瞬で払拭し、いつもの穏やかな微笑みを浮かべる。


「焼肉でいいか?」


 さっきもいいと言ったけど、それでも最後まで私の気持ちを尊重してくれるのが海斗さんらしいと思った。


「うん」


「今から予約するから先にもう少し髪を乾かして来いよ。まだ、少し濡れている」


「じゃあ、少し待っててくれますか?」


「ああ」

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