彼女のことは俺が守る【完全版】
 この出会いが運命かどうか分からないけど、私と海斗さんを繋ぐ何かがあるのならそれを信じたい。雅さんの言葉が優しく染み込んでいく。


 目の前に自分の握り締めた手が見えて、不安に押し潰されそうだった私は少しだけ顔をあげると、そこには雅さんの穏やかな微笑みがあった。


「そんな顔しないで、里桜ちゃんが不安に思う気持ちも分かる。今は無理でも少し落ち着いたら自分の気持ちに素直になってみたら?先は分からないでしょ」


 先が分からないのは分かるけど、それでも海斗さんに思いを伝えるなんて私には無理だった。海斗さんは芸能人で私は一般の会社員。一緒には住んでいるから、嫌われてはないと思うけど、海斗さんは優しいのは私だけではない。海斗さんの優しさに勘違いしてしまいそうになるだけ。


「無理です」


「今は無理でも先はね。さ、今は時間がないから行きましょ」


 時計を見ると思ったよりも時間は過ぎていて、そろそろ会見の行われる会場であるホテルに向かわないといけない時間になっていた。


「雅さん。ありがとうございました」


「いいのよ。篠崎くんも待っているわよ」


 用意が全て終わって私がリビングに行くと、海斗さんも準備を終えていた。海斗さんは黒の生地に濃紺のラインが入っている細身のスーツで、シャツ一枚にしても吟味して揃えたものなのだろう。いつもは自然に流してある髪も今日は艶やかに纏めてある。いつもより鋭さを感じる気がした。海斗さんも緊張しているのだろうか?

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