彼女のことは俺が守る【完全版】
 私は何を見ていたのだろう。


 こんな男を本気で愛し、本気で一生傍に居たいと思った自分が情けない。少しでも可愛く思われたかった私は余りにも滑稽だった。ここまで来ると呆れ果てて何も言えなくなる。こんな男を本気で好きだったのが情けないと思った。心にざっくりとナイフを刺され、噴き出すように私の心は血を流していた。


 こんな状況に置かれるほど私は悪いことなんかしてない。ただ、本当に彼のことを大事にしてきたと思う。確かにこの頃は仕事が忙しく会う機会も減っていたかもしれない。でも、だからといって、仕事を頑張ったということがこんな仕打ちを受けるほどの悪いことだろうか?


「わかった」


 私がそういうと、優斗はホッとしたような顔をする。その顔を見ながら悲しくなってくる。


 彼女はニッコリと嫣然たる微笑を浮かべ、私を見つめる。今や高校からの戦いに自分が勝ったとばかりに私に微笑み掛ける。綺麗な微笑みを浮かべれば浮かべる程、私は苦しさの中で喘ぐしかなかった。そんな私に彼女は息の根を止めるとばかりにニッコリと笑った。


 しなやかなその指はバックの中から白い封筒を取り出すと、テーブルの上に置く。そのテーブルの上に置かれたものは私にとっての最後のトドメのようなものだった。

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