彼女のことは俺が守る【完全版】
 まさかこんなものまで用意してきているとは思わなかった。


 ここまでしないといけないほど、彼女は私を憎んでいたのかと思うと、友達というのは仮初の関係だったのと思い知る。彼女は私を友達と思っていなかった。真の友達だったら、こんな仕打ちは出来ないだろう。ましてや、三年も付き合った彼を寝取るようなことは出来ないだろう。


 この二人は私をどこまで馬鹿にすればいいのだろう。そして、どこまで私を傷つけるのだろう。


 目の前に出されたその封筒はどう見ても『結婚式の招待状』だった。真っ白な封筒には上品な型押しの花があり、その花の横にはご丁寧に私の名前まで書いてある。


 【藤森里桜 様】


これは私の名前に間違いない。


 我慢も限界だった。止まらなくなった震えは次第に指先から全身に広がっていくような気がした。きっと、私の顔を鏡に映すと蒼白で今にも倒れそうになっているかもしれない。でも、ここで倒れるわけにはいかない。ここで倒れたら、きっと彼女を喜ばせるだけだと思った。高校からの彼女の自分勝手な戦いのエピローグにはされたくない。


「よかったら来てね。高校の仲間内で里桜だけ来なかったらツマラナイでしょ。折角みんなで集まる機会だから楽しみましょ。プチ同窓会になると思うの」


 私は彼女に何か悪いことでもしたのだろうか?


 そう思うくらいに悪意を感じる。
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