彼女のことは俺が守る【完全版】
「ありがとうございます」


「お礼を言われることはないよ。俺が里桜を…」


 私は車に乗って海斗さんの言葉を聞きながら、今までのことを思い出していた。あの喫茶店での出会いは雅さんの言うとおりに運命だったのかもしれない。今までの人生で一番辛かった日だけど、海斗さんに出会うことが出来た。そして、私はもう二度と恋なんか出来ないと思っていたけど、恋をすることが出来た。優しさに癒されて私は今、ここにいる。


「里桜。本当にいいのか?籍を入れてもいいか?」


 心配そうに見つめる海斗さんはまだ私の気持ちを知らない。それに、海斗さんが私のことを思っていてくれたことが嬉しいと思いつつも、自分のどこに好かれる要素があったのかもわからないから頭の中が混乱していたのもある。

 自分の気持ちに素直になればもっと、幸せになれると思う。でも、私の気持ちを海斗さんに伝えるのはマンションに帰ってからでもいい。二人の時に私は自分の気持ちに素直になるつもりだった。そして、そこから始めたいと思う。


 偽装結婚からではなく、どこにでもある恋愛の一つでいい。


「はい。自分で決めましたから」


 そうこれは自分が決めたことだから、海斗さんのことが好きだからこの結婚を決めた。幸運にも海斗さんは私のことを好きだと言ってくれている。少しでも好きだと思ってくれているだけで、私はいい。

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