彼女のことは俺が守る【完全版】
 私が欲しいのは…とっても贅沢なもの。この世の中で私が一番欲しいもの。それは海斗さんの気持ち。私が思っているのと同じくらいに私のことを好きになって欲しい。そう思うのはきっと我が儘だと思う。


「海斗さんの気持ちが欲しい」


「俺の気持ち?」


「私のことを好きになって欲しいの」


 私はカッと熱くなった頬を隠すように下を向くと、私の身体はもう一度海斗さんの身体に包まれた。そして、海斗さんのクスクス笑う声が降り注いだ。


「里桜は欲張りだな。これ以上、どうやって里桜を好きになればいいんだ?」


「え。」


 甘いバリトンの声がシャツ越しに私の心に響く。そして、私と同じように海斗さんの心臓も大きな音を立てていた。


「俺は里桜が好きだよ。記者会見でも言っただろ。あれは台本なんかじゃなく俺の本心。俺は本気で里桜のことを思っている。好きだから結婚したいと思っている。これじゃ、足りないか?」


「それなら、落ち着いたら離婚なんて言わないで」


 海斗さんの腕の力がキュッと強くなる。もう離さないと言葉ではなく身体中が伝えてくれる気がした。


「いいのか?離さないぞ。なあ、里桜も自分の気持ちを俺に教えて欲しい」


 偽装結婚するという事で始まった同居だったけど、今日、籍も入れ、正式な夫婦となったのに、告白をするという不思議なシチュエーション。出会いが出会いなだけこれでもいいのかもしれない。

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