彼女のことは俺が守る【完全版】
 隣りの席に座っていたはずなのに、いつの間にか私の前に座り直した彼はニッコリと笑い、バリトンの声を響かせる。


「なんで私の名前を知っているの?」


「さっきの女が言っていたでしょ。どう?俺の申し出を受けてみない?悪いようにはしないよ」


 ふと視線をあげるとそこにあったのは私のことを見つめる優しい瞳。その瞳の中で揺れる私は不安そうな顔をしている。そんな不安そうな私を目の前にしても篠崎海は一歩も引かない。物怖じもせずにただ真っ直ぐに微笑みながら私を見つめてくる。


 綺麗な微笑みだと思った。いきなりプロポーズしてくるからわけのわからない人というのが私の中の感想だったけど、若手実力派俳優というだけあって、芸能人としての眩いオーラだけはビシビシ伝わってくる。そっと、目を細め笑うその切れ長の瞳が綺麗だと他人事のように思っていた。


 単にからかっている風には見えない。


 条件だけ考えるとたまらなく魅力的だとは思った。もしも結婚するのが篠崎海だったら、優斗を見返すことは出来るし、あの友達だった人にも羨ましがらせることは出来るだろう。


 だからと言って、私はそんな軽はずみに結婚なんかしていいのだろうか?


 それにこの人を信用することはできるのだろうか?

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