彼女のことは俺が守る【完全版】
 結婚に対しては私なりの憧れもあった。大好きな人と歩いていくための区切りが結婚。結婚してお互いに愛し合って生きていきたいと。それなのに、顔と名前しか知らない人と結婚なんて私の中ではありえない。でも、この時の私は少し壊れかけていたのだとしか思えない。すぐに私は篠崎海の申し出を断らなかった。


 何かに縋らないと自分を保てないほどの痛みを抱えていた。たとえそれがとんでもない申し出であっても…。


「考えさせて。急には決められないわ」


 壊れかけた私が必死に縋ろうとしたのか、それとも篠崎海に瞳の奥に見えた真剣な瞳が私の心を知らないうちに動かしたのか?でも、敢えて理由をつけるなら、『女の勘』なのかもしれない。この人は本気で私のことを心配してくれていて、この最大級の難関を一緒に乗り越えてくれるようとしているように見える。そして、もしも裏切られたとしても私はこれ以上傷つくことはない。


「いいけど、一晩しか待たない。一晩待って連絡が無かったらこの話はなかったことでいい。連絡がないということは俺と君との縁はなかったというだけのことだと思う。でも、俺は待っているよ」



 篠崎海は私に猶予はくれなかった。篠崎海は自分のスーツの内ポケットから銀色の名刺ケースを取り出すと、中から一枚の名刺を取り出した。そして、その裏に万年筆で携帯の電話番号らしきものと、メールアドレスをサラリと書き込んでいく。


 そして、私の目の前にある『結婚式の招待状』の上に置いたのだった。

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