彼女のことは俺が守る【完全版】
 涙を流しながら痕跡を消しつづけた私の部屋は次第に物が減っていき、優斗の物が入ったゴミ袋が玄関をいっぱいにしていく。そして、三年という月日の重みをマンションのゴミ捨て場に持って行ったのだった。


 ゴミ袋を全部捨ててしまうと、私の部屋はこんなにも殺風景だったのだろうかと思った。すっきりと片付けられた部屋は寂しさを感じさせ、物を捨ててしまっても優斗との思い出は私の脳裏に嫌なくらいに焼き付いていて、思い出があり過ぎる部屋が辛さを倍増させた。物を捨てたくらいではこの苦しみからは逃れられない気がした。


 いっそのこと全て捨ててやり直したい。


 誰も知らない場所に行き、誰の痕跡もない部屋に住む。マンションだけでなく、家具も、服も全部捨ててしまってやり直したい。ゴミを捨てるだけでなく全てをリセットしたかった。


 私は自分の貯金通帳を見ながら溜め息を零す。通帳に並ぶ数字が現実で、優斗との結婚のためにお金を貯めていたとはいえ、引っ越しして家具を全て買い直すなんてできそうになかった。


 次第に愛が失われているのを感じながらの終わりならこんなにも苦しくはないだろう。優斗は私との別れを微塵も感じさせず、ただ、私を奈落の底に突き落とした。
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