彼女のことは俺が守る【完全版】
 そんな私の電話に上司は『お大事に』とだけ優しく言ってくれた。システムダウンしてしまっているのはまだ回復してなかったのが幸いにして、私の休みはスムーズに了承されたのだった。


 会社を休んで自分の部屋に閉じこもっていると、色々な思い出が波のように襲ってくる。優斗のことは思い出したくもないのに、浮かんできて、その度に私は涙を流す。涙を流し、拭う度に目はどんどん腫れていき、一人で耐えるには痛みが大きすぎた。


 誰か私のこの気持ちを受け止めて欲しいと思って浮かんだのは高校からの親友の一人。でも、彼女はあの元友達とも友達という間柄で、今、会うときっと私は苦しくなる。大学の友達は優斗のことを良く知り過ぎている。
 私は一人でこの気持ちを押し殺すしかないのが現状だった。


 誰にも言えないこの思いは苦しい。


 心が壊れ、涙も枯れ果てた私に目についたのは篠崎海から貰った名刺だった。テーブルの端に置いたままで私は手を伸ばすことも出来ずにいた。彼が言ってたタイムリミットまであと十分を切っていた。


 不意に思い出した彼の綺麗な顔と、強い言葉が私を包む。


『俺が君を守るよ』


 二十三時五十五分。


 私は篠崎海の名刺を握り締めていた。

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