彼女のことは俺が守る【完全版】
 自分の握った手を見つめると真っ赤になっている。緊張しているのかもしれない。何か話した方がいいのかもしれないけど、ほとんど初対面の私に会話なんかあるわけなくて沈黙が続いていた。少しの居心地の悪さを感じていると話し掛けてきたのは篠崎海の方で、それはごく自然で、『何か食べに行く?』っていうのとトーンは変わらなかった。


「結婚する気になった?」

「……」

 
 この車に乗ったのだから、私は篠崎海と結婚しないといけないのだろうか?でも、ただ今のマンションから連れ出してくれるなら誰でもよかった私に今すぐに結論なんか出るはずもない。『結婚』というのはそんなに簡単なものではない。それに、篠崎海は若手実力派俳優なのだから、そう簡単にはいかないだろう。


「俺のこと怖い?」

「そんなことないけど、緊張しています」


「里桜のことは悪いようにはしない。それは約束する」

「ありがとうございます」


「なあ。里桜の事教えて欲しい。差し支えない範囲でいいから」


 差支えない程度ってどの程度だろう。こういう時はお見合いの時の釣り書きでも言うべきなのだろうか?


「藤森 里桜 24歳。3月3日生まれ。〇〇商事経理課勤務」


「それだけ?」


 篠崎海はそういうけど、こういう時はどんなことを言えばいいのだろう。何か質問してくれた方が応えやすい。

「後は何が知りたいですか?」


「好きな食べ物とか?」

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