彼女のことは俺が守る【完全版】
「え。名前?」


「海(カイ)は芸名だから、里桜には海斗と呼んで欲しい」


「はい」


 どのくらい車は走ったのか分からないけど、ゆっくりとした篠崎海の雰囲気に促されるように私は徐々に言葉を零していた。車は都心の高層マンション群の一角にある駐車場に滑り込んだ頃には最初の緊張は薄れていた。


「ここは?」


「俺のマンションだけど、とりあえず今日はどこかのホテルの方がよかった?」


「いえ。なんか緊張して」


「緊張するなって言っても無理だよな。でも、これから里桜が住む場所になるから徐々に慣れて欲しい。昨日も言ったように俺に気にせず里桜は自分の生活をすればいい」


 結婚はしていてもお互いに干渉しない生活を送る。これが篠崎海の言う『偽装結婚』なのかもしれない。シェアハウスに少しだけ似ている。それにしても、昨日から私の人生が一気に動き出しているような気がした。


 私の住んでいるマンションは一人暮らしの女の子が住むマンションとしては恵まれたものではあったけど、この篠崎海のマンションは私の想像を超えている。


 芸能人とかは豪華なマンションに住んでいるものとは思ったけど、このマンションの豪華さは桁が違う。駐車場に並ぶのは有名な外車が多く、触ったら指紋が付くのではないかと思うくらいに綺麗に磨かれている。高級車の品評会でもあるかのように並ぶ車の中に篠崎海の車は止められ、私の荷物を持つと、自分だけが先に降り、私が座っている助手席のドアを開けると私が降りるのを手伝ってくれたのだった。


「ありがとうございます」
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