彼女のことは俺が守る【完全版】
「不味かったか?」


「ううん。美味しい。美味しくてホッとした」


「それならよかった。とりあえず俺はシャワーを浴びてくるから食べたら先に寝てていいよ」


 そういうと篠崎海は私の頭をポンポンと軽く撫でてからバスルームの方に消えて行ったのだった。一人で残されたリビングで私はパスタを口に運ぶ。


 篠崎海は優しすぎた。


 きっと私が食べやすいようにと自分はバスルームに行ったのだろう。その篠崎海の優しさの通りに一人になると私の頬に涙が零した。胸の奥での痛みは付き纏う。でも、次第に涙は温かさに包まれていた。


『本当にいい人』


 それが私の篠崎海に対しての感想だった。


 食べ終わったパスタのお皿を片付けると、する事が無くなってしまって、ソファに自分の膝を抱きしめるように座るしかなかった。寝ていていいとは言ったけど、さっき、ゲストルームの場所はサラッとだけは案内されたけど、ドアを開けて勝手に入って寝るのもどうなのだろう。そう思うと動けなかった。


 ソファに座り、ゆっくりとこの部屋を見回すと物は少ないけど、豪華なマンションであるのは間違いない。私が座っているソファも目の前にある大きなテレビだけでも凄いけど、置いてある家具も色が統一されスタイリッシュな空間を演出している。


 この部屋に今から私が住むなんて想像出来なかった。

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