彼女のことは俺が守る【完全版】
「藤森里桜です。よろしくお願いします」


「この度は篠崎が無理を申しまして申し訳ございません。しかし、正直なところ里桜さんの存在は助かっております。篠崎海の婚約者としての里桜さんの生活にはご迷惑を掛けないように、社をもって対応していくつもりです。実際に籍は入れる必要はないですのでその辺りはご安心ください」


 高取さんの淀みない声を聞きながら、私の頭の中で疑問符が湧く。


『篠崎海の婚約者としての里桜さんの生活』って、偽装結婚ではなく、偽装婚約者という事なの?実際に籍を入れる必要はないというのなら、あの篠崎海の署名のされた婚姻届は何だったのだろう。


 私が驚いて篠崎海の方を見ると、ニッコリと笑っている。笑っているけど、何もその件に関しては言わなかった。


「高取。挨拶はその辺りにしておいて、先に行こう。店には連絡を入れておいてくれたか?」


「勿論です。店長がお待ちとのことですので、少し急ぎます。では、車を動かします」


 そんな高取さんの言葉と共に車は動きだし、この時期はまだ明るい街をサラリと車は走り出す。私の横に座る篠崎海は前を向いたまま何も話さないし、運転する高取さんも何も話さない。そして、私も、篠崎海の行動と、高取さんの言葉との相違点が気になり、ずっと考えていた。


「到着しました。車を停めてきますので、海と里桜さんは先に店の中に入って置いてください」
< 63 / 188 >

この作品をシェア

pagetop