彼女のことは俺が守る【完全版】
 定番のデザインから、少し奇抜なデザインまでたくさんの種類が並んでいく。私は自分の指に嵌められていく指輪を見ながら、逃げて帰りたくなった。指輪にはどれ一つとして値段の札は付いてないし、今、私の指に嵌められたのはゴージャス過ぎて指が重く感じてしまう。


「ちょっと違うか」


 そう言いながら、楽しそうに篠崎さんは色々と指輪を私の指に嵌めていく。私はというと、そのどれもに恐縮してしまい、身体が固まってしまうだけだった。


「どれか好きなのあったか?里桜には可愛らしいデザインの方が似合うと俺は思ったけど」


 そんな篠崎さんの言葉に私は自分の思っていることを口にしたのだった。ここで言わないと流されてしまうと思ったからだった。



「指輪は必要でしょうか?」



 一瞬、この部屋の空気は硬直したと思う。それも、一番硬直したのはさっきまでにこやかに対応していた店長で、顔の微笑みは崩さないけど一瞬だけ目を見開いていた。


「いるに決まっているだろ。そのために今日はここに来たんだよ」


 この店長を初め店員の女の人の居る前で篠崎海と私の偽装結婚のことを言うことは出来ない。彼女たちから見れば私は『俳優篠崎海の婚約者』であるのだろう。でも、実際は、まだ出会って間もない関係だった。


 真っ直ぐに私に視線を感じて、逃げられないと思った。


「選んでくれますか?」


「俺が選んでいいの?」
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