彼女のことは俺が守る【完全版】
「無理です。着こなせません」


　それは私が感じた本当の事だった。この店の服はもっとちゃんとしたところのお嬢さんしか似合わないと思う。普通の会社員である私には荷が重いと言うよりも場違いだとさえ思わせる。それにまだ優斗の結婚式に出る勇気も覚悟も出来てなかった。


　そんな私がドレスを買うなんて…。


「大丈夫。私に任せて。何色がいいかしら。里桜ちゃんは色も白いし、何でも似合いそう」


「雅さん。あの…」


　そんな雅さんの言葉に私の心は少しだけ暗くなっていく。この店の格と自分が合わないのもあるけど、優斗とのことを少しだけ思い出してしまったからだった。でも、結婚式は一か月後なのだから出席するならば、ドレスも必要だし、このタイミングで揃えないといけないのは分かっている。


　でも、心が痛い。


「里桜ちゃん。今日は止めておく？」


　雅さんがどこまで知っているのか分からないけど、私の顔が曇ったのに気付いてくれたのだろう。忙しいのにそこまで気を使わせるのも申し訳ないとも思った。でも、まだ気持ちが定まらない。


「あの、私」


「無理しないでいいのよ。まだ、時間はあるし、後から里桜ちゃんが好きなのを買ってもいいと思うし」


　不意に思い出したのはあの時の優斗と友達の顔。私はあの日、心を砕かれ、このままでは生きていけないほどのダメージを受け、そんな私を助けてくれたのは篠崎海だった。


　そして、今日は…私のために大事な時間を割いてくれている。それが分からない私ではなかった。
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