彼女のことは俺が守る【完全版】
「久しぶり。藤森。元気にしてたか？」


　急に話しかけられ、急に優しい笑顔を向けられてドキドキしたのを覚えている。その気持ちは今も変わらない。今は誰よりも優斗のことが好きだし優斗の笑顔を思い出すだけでとても幸せな気持ちになるくらい。でも、あの時は緊張の方が先だった。


「はい」


　返事しながらも私は自分の声が震えるのを感じた。知っている人なのに知らない人と話しているような気がする。緊張する私に気付いているのか、優斗はさっきよりもっと優しい声を響かせた。


「そっか、久しぶりに大学の飲み会に参加するといいな。自分も大学生に戻ったみたいだよ」


「仕事大変ですか？」


「ああ。でも、遣り甲斐がある。自分のしたい仕事を見つけて、その会社に入れたんだから俺は運がいいと思う。だから頑張るよ」


「凄いです。私はまだ何も決まってなくて、自分で仕事が出来るとか思えないし」


「そうでもないと思うよ。案外、藤森みたいな子の方が、仕事が出来たりするしね。藤森がよかったら、俺と一緒の会社を受けてみない？割といい会社だよ。福利厚生もいいし、女の子も割と働きやすい職場って言っている」


「ありがとうございます。頑張ってみます」


　大学生の時の優斗しか知らない私は社会人となった優斗の落ち着きに大人の雰囲気を感じ、その男らしさにドキッとした。そして、優しい微笑みにもう一度胸を飛び上がらせたのだった。

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