彼女は僕を「君」と呼ぶ
終わりはいらない
明日が来る様に、その日は間違いなくやってくる。

ぐっと目一杯背伸びをした好きが終わらない。それでいい、それが君自身である。


春休みを控えているというのに相変わらず空気は冷たい。

年代物のストーブが焚かれてはいるがそれも気休めにしかならず、つらつら述べられる校長の話に何度目かの欠伸を噛み潰した。

それを考慮してか、手短に済まされたHR、何時もの場所には何処からか吹き込んできた花弁が数枚落ちていた。

灰色のコンクリートの上だとその桃色は良く映える。

今日で彼女越しの空も見納めか。

相変わらず、渡り廊下から見る空は青くて、白い雲がゆったりと風に乗って過ぎて行く。

春の陽気にはまだ遠いが、それでも初めて此処に来た時よりずっと暖かくなった。

ふと、彼女の踵を下りたのを見た。
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