そんな結婚、あるワケないじゃん!
「その通りなの。私、彼よりも主人を選んだ人だから」


キッパリと言い切る言葉には強さがあった。
凛とした雰囲気を持つ人は、迷う様子もなく私に言った。


「私、主人に会うまで自分に凄く自信のない人間だったの。顔ばかりがもてはやされる割に、誰も私に踏み入ろうとはしてくれなくて。
唯一入ってきてくれた洋平君からも、いつも冷たくされてばかりで。優しく癒して欲しかったのに、ちっともそんなことしてくれない。
……だけど、早見は最初から私に優しくしてくれた……。
仕事に慣れない私を気遣って手伝ってくれたり、残業になりそうな時も仕事を分担してくれた。だから、洋平君にもそんなふうに接してもらいたい…って言ってただけだったのに……」


言葉って難しいわね…と呟く。

こんな美人の自信を奪うような態度を取ってた羽田の理由が、全くもって分からん。


「洋平君から『別れよう』って言われた時、ホッとしたの。私の心の中は早見でいっぱいになってたから……」



別れが先じゃなかったんだと教えてくれる。

既に決まってた心の後押しを羽田の言葉がしたんだ……。


「洋平君と別れて早見に結婚を前提にお付き合いをして欲しいと申し込まれたの。やっと私のことを大事にしてくれる唯一の人に出会えたと思った。だから、彼と結婚して良かったと思う。…だけど、私と別れた後、洋平君がどうしたかが少しだけ気になってて……」


ジッと見つめられてたじろぐ。
美人の眼差しに耐えきれず、俯いたままで話した。


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