アタシ、好きって言った?
東京
「シンイチ!たくみが、たくみが!」
バンドメンバーの一人から電話があった。
「あいつ、バイクで事故にあって、今練馬の病院に運ばれたって!」
実家へ帰ろうとサービスエリアで休憩している時だった。
急いで病院へ向かった。
エンジンが悲鳴をあげている気がした。
病院の救急外来の前にバイクを乗り捨てて走った。

「シンイチ・・・たくみが・・・」

他のメンバーは顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。

急な車線変更をした若いカップルの車に巻き込まれて事故にあったらしい。
バンドを組んで3年。みんな必死に働きながらデビューを目指していた。
「なぁ、アメリカ行こうぜ!」
たくみの口癖だった。
みんなで警察署に保管されたバイクを見に行った。
たくみがいつも磨いてピカピカだった72年製ショベルヘッド。
ホイールやハンドルは曲がり傷だらけだったが、エンジンだけは傷一つなく綺麗なままだった。

「俺さー、みんなハーレー乗ってるのマジ嬉しいんだよ」

たくみは東京が地元だった。田舎から来た僕やメンバーを馬鹿にすることもなく、メンバー全員のハーレーをガレージに置いてくれていた。
「気にするなよ。東京なんでも高いんだよ!」

あいつとの別れの日。
メンバー全員がバンドを解散しそれぞれの実家に帰ることを決めた。
あいつがいないバンドなんて・・・
みんな同じ意見だった。

「シンイチ君。・・・あの子のバイクあなたへ譲りたいの。」
たくみのお母さんが話しかけてきた。
東京に来てから本当に優しくしてくれた人だった。
「東京に来たら顔を見せてね。あの子が愛したバイクと音楽をずっと忘れないで」

「僕はもう・・・」
言葉が出なくて涙が出た。

実家に帰り、毎日たくみのことを考えていた。

仕方なく働き、何も考えたくなくてギャンブルに夢中になった。

そして、夜の繁華街に夢中になって身を委ねた。

たくみは今の僕を見てどう思うだろう。
ホコリをかぶったターンテーブルに、錆びたバイク。

メールの着信音がなる。
「シン君、仙台にいつ来る?」
ナツだった。
「どうしたの?明日逢いたいなと思ってたんだ」
「よし!じゃあ明日ね!待ち合わせは電力ビル前ね!(笑)」
「うん」
ナツから連絡が来るとどうしてこんなにも嬉しくて、苦しいんだろう。
でも、今の僕には何よりも大事なことだった。


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