strange
present time
手帳をそっと閉じた。

少し震える手でネックレスに触れた。

ずっと握りしめていた手紙を震える手でそっと開いた。


記憶を失くしても、大切だって無意識に思ってた。

大切なはずだよ、慧からのプレゼントだったんだから…


胸が痛くて、痛くてたまらない。
私の馬鹿…どうして忘れたりしたの。

家の電話が鳴り、ママは席を外した。


あきが、ポツリと言った。

「俺、思ったんだ。記憶、慧さんが預かってくれたんじゃないかって…」

あきの言葉に、顔を上げる。


「沙良を生かすために。あの時、沙良は本当に危なかったんだ。食べないし飲まない。夜中じゅう泣いて…川に飛び込もうとしたこともあったんだよ。自転車見るたびに震え出して、泣いて…」

だから自転車、倉庫に隠してあったんだ。その辺りのことは、あまりハッキリ覚えてないけど…

ただ、絶望と悲しみの中にいた。

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