キミが欲しい、とキスが言う

「ダニエルくんは二年前からこっちに戻っているんだ。その一年くらい前から、彼に君を探すように頼まれていた」

「戻ってる……って。ダニエルがいるの?」

「いるよ。今日も後で来る。三階のホールで、環境と色彩の講演があって、彼に手伝いを頼んでいる。彼は今、うちの助教授をしているんだ」


言われてみれば、割にフォーマルな格好をした人も多い。
プール側とは逆の、ホール側のイベントになんて興味もなかったからちゃんと確認していなかった。

自然と体が震えていた。

捨てて行ったくせに、なんで戻ってなんて来るの?
今更すぎるわよ。


「アカネちゃんがいるって知ったら泣き出すぞ。何年も探し回って……」

「やめてください」

「アカネちゃん?」

「もう関係ない人ですから」

「関係なくはないだろう。子供もいるんだったら」

「あの子は私だけの子です。じゃあ」

「あ、アカネちゃん」


追いかけてこようとする森田さんを振り切った。
激しい動機に息が苦しくて、心臓が飛び出しそうだ。

どうして今更こんな。

会議室前で大きく息を吐きだすと、プールバックを持った子供たちが勢いよく出てくる。
一番最後に、浅黄と幸太くんが出てきた。


「おかあさん」

「浅黄」

「あのひと、誰?」


見つめてくるその顔は、オドオドと私を頼ってきたダニエルに酷似していた。

まるで、彼との関係を断ち切ろうとする私を、戒めるように。


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