キミが欲しい、とキスが言う

思えば、行き当たりばったりに生きてきてしまった。
間違えたのは、どこでだったのだろう。

高校卒業まで、私は普通の女の子だったと思う。

真面目なサラリーマンの父に、海外転勤時代に知り合ったというイギリス人の母。

ハーフである私は、背が高く、色が白くて目鼻立ちがはっきりしていて見かけに関していえば大人びていた。
黄色人種である生粋の日本人の間に入れば、ハッと目を引くくらいの容姿ではあっただろう。

たぶん、普通の子よりはもてはやされてきたのだろう。
昔からちょっと困ったことが起きても、すぐに誰かが助けてくれた。

あまり悩まずに生きてきてしまったからか、先のことを考えるのは苦手だ。



 最初の失敗は、多分大学受験の時だと思う。

そんなに大きな目的があるわけでもなく入った高校はそこそこの進学校で、就職に関するツテはほとんどなかった。当然のごとく、皆が進学の意思を示し、私も特に何も考えずそれに倣った。

唯一得意科目だった英語を生かしたいと、とある大学の英文科を受験したまではよかったけれど、見事に落ちてしまう。
私に残された選択肢は一浪するか、滑り止めで受けた別大学の経済学部に行くかだった。

ここで、私はせっかく受かったんだからと経済学部への進学を決めた。

でも、授業は面白く無い。
考えてみれば当たり前だ。日本経済にそこまでの興味はなかった。

それに大学は自由だった。サボっても、誰も文句なんか言わない。

誘ってくれる友人もたくさん出来たし、夜中にオールで騒ぐのも、街に出てナンパされるのも凄く気分が良かった。
受験地獄からの解放で浮かれていたのもあっただろう。

私は、思うがままに遊んで、親の小言など気にもしなかった。

< 20 / 241 >

この作品をシェア

pagetop