キミが欲しい、とキスが言う

どうせ高校生の時みたいに、いつか誰かが責任をとってくれるんだと思っていたのだ。
サボったって、成績が悪くたって、入学させたからには卒業はさせてくれるだろうって。

その考えが甘かったのだと知ったのは、年度末。
私はその年の単位のほとんどを落とした。

慌てて心を入れ替えてみても、もう遅い。
キツキツに講義をいれて、真面目に講義に出ても、内容はちんぷんかんぷんだし面白くない。

ここに来てようやく、経済なんて勉強してどうするの、とも思い始めていた。

目的を見失った大学にいる意味も感じられなくて、私は両親の反対を押し切って退学した。

専門学校に行こうか、就職活動をしようか。
考えているうちにも時間は過ぎていく。

そのうち、友人がキャバクラでのバイトの話を持ってきた。


「茜なら、年も上に見えるし大丈夫じゃない?」


確かに、英国の血がまじる私は、十五歳のころから「二十八歳?」と聞かれることが多かった。
もうじき二十歳の誕生日を迎える今もそのくらいの年齢に見られる。

面白そうだったし、何よりも割のいい賃金に惹かれて、バイトを始めた。

店のママは源氏名をつけようとしてくれたけど、私はそのまま自分の名前を使いたいと言った。
ほかの名前で呼ばれると、自分が自分でなくなりそうなのがなんとなく嫌だったのだ。


「あんたは人気でそうねぇ」


私を見たママさんがにっこり笑ってそう言った。

その宣言通り、私は人気者になったのだ。

体のラインの出る衣装を着せてもらって、おじさんの隣に座ってお酌するだけで良かった。
セクハラまがいの態度だって、ニッコリ笑って流していれば問題ない。
あまりにしつこい時は、店の用心棒のお兄さんたちが助けてくれる。

元々、私は初体験も早く、男性に触られる事自体には慣れていた。
そして人と話すのは大好き。
この時は、これが天職かもしれない、なんて思っていた。
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