年の差恋愛
「…恩は十分に返してきたはずです。どんな異動も黙って受け止め、そこで必ず成果を上げてきた。違いますか?」

「…」

「その仕打ちがこれかと思うと、自分がただ情けなく思いました。ですから、これからは、自分の為に、生きていこうと思います。それでは失礼します」

「待て、市来!」

バタンッ‼︎

ドアの方に向かって歩き出した茂。その時、勢いよくドアが開き、亜美が入って来た。

「突然すみません!ですが、その辞表、受理するのはお待ちいただけませんか?」
「…澤田、何しに来た?」

驚きの眼差しで、亜美を見つめた茂が、そう言った。

「…市来部長が、辞表届を出しに来たと、同僚から聞きまして」
「…ったく。専務、お騒がせしました。行くぞ、澤田「行きません!辞表届を撤回するまでは」

「おい、お前が決める事じゃない。口を出すな「それは、無理な話だな」

「「「…社長」」」

開いたドアの向こうから、社長が顔を出した。

茂と亜美の横を通り過ぎ、専務のデスクの前に来ると、辞表届を手に取った。

「…専務、まさかこの辞表届を受理したんじゃないだろうな?」
「ま、まさか、そんな事しません」

冷や汗をかきながら、専務は社長に言った。
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