年の差恋愛
…専務室。

茂は、ドアをノックすると、中に入った。

「市来部長、そろそろ出なければならないんだが、何の用だ?」

少し、イラついた感じで、専務が茂に言う。

「…時間は取らせません。これを受け取っていただきたく参りました」

そう言うと、専務のデスクの上に、辞表届を置いた。まさかの代物に、専務は目を見開いた。

「…市来部長、これがどういう事か、わかってるんだな?」
「もちろんです。私利私欲のためにしか動かない上司の元で、これ以上働くわけにはいきません」

茂は何の迷いもなくそう言った。専務は眉をひそめ、茂を見た。

「…これまで、散々面倒を見てやったのに、恩を仇で返すつもりか?」

…専務は、茂は、女より仕事を取ると思っていた。今まで、結婚もせず、仕事だけを頑張ってきた仕事人間だ。

それなのに、いとも簡単に、仕事を辞めるという。

…それはマズかった。

市来茂と言う男を、一番に認め、買っている男がいる。

…それは、この会社の社長だ。

だから、そう簡単に、辞表届を受け取るわけにはいかなかった。受け取ってしまえば、自分の思惑から外れてしまう。まさしく、私利私欲の為に動けなくなる。
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