居場所をください。



「はい、オッケー!」


撮影が終わって俺は美鈴に向かって

歩き出した。


「貴也くん?」


「先いってろって。」


今はこいつなんかどうでもいい。

美鈴と話したかった。

佐藤さんに取られる前に。


「美鈴。」


「…貴也。」


「他の男に触られて顔赤くしてんじゃねーよ。」


「…ごめん。」


「他の男を左側に立たせてんなよ。」


「…貴也だって

ずっと大橋さんの左側にいたじゃん。」


……………見てたのかよ。


「貴也に言われたくないよ。」


なんだよ、怒ってんのかよ。


「…どこ行くんだよ。」


「着替えてくるの。」


チッ…なんだよ。


「俺のこと好きなんじゃねーの?」


俺がそういうと美鈴は歩き出した足を止めた。


「は?」


「俺のこと好きなんじゃねーの?

避けてんじゃねーよ。」


「避けてるのは貴也じゃん。

ずっと大橋さんと話してたのは貴也じゃん。

勝手なこと言わないで。」


あーもう、なんだよ。

けんかしたいわけじゃねーのに。


もっと素直になれよ、俺。


そう思うと俺は動いた。


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